4日の水曜日、PTAの仕事で小学校に行き、仕事が終わるとちょうど次男の下校時間だった。
玄関に三年生がやって来たので一緒に帰ろうと思って次男を探したが見当たらない。
靴箱を確認すると上靴が入っていたので、もう外に出てしまったようだった。
まあいいかと思って、PTA花壇の枯れた花を摘み取ったりしてからゆっくり歩きだした。
そのうちに、道の先に4人の男の子が歩いているのが見えてきた。
次男のグループだとすぐ分かった。
見ていると、子供たちが歩道にしゃがみこんで動かなくなった。
私はすぐに追いついて「どうしたの?」と声をかけた。
すると次男が何やらめそめそしている。
立ち上がって私に何かぐずぐずと言ったが、よく聞き取れなかった。
もう一度「なあに?」と訊くと、「やっぱりポン太なんか死んだほうがいいんだ。」と言った。
「どうしたの?嫌なこと言われたの?」と訊くと
「道徳の時間にMが、嫌な奴がいるんだよねえって言った。」と次男。
例のポン太を何かと構うMちゃんは、今通路を挟んでポン太の隣の席にいる。
「Mちゃんは、それがポン太だって言ったの?」
「言わないけど、絶対ポン太のことに決まってるんだ!」
「そうなの・・・?」
「お母さん、Mのお母さんに言ってくれた?ポン太に嫌なことしないようにって。」
「・・・言ってないよ。」
「お母さん言ってよ。」
「う~ん・・・・。」と私は困ってしまった。
「もう死にたい。死んだほうがいいんだ。」とポン太は言った。
私はますます困ってしまって、「死にたいなんて言わないの。」と言った。
こういう時はどうしたらいいのか途方にくれてしまう。
「嫌なことがあると死にたい気持ちになるけど、嫌なことばっかりじゃないでしょ?楽しい事だってあるんだから死にたいなんて言わないで。」と言ったが、あんまり説得力はないなと思った。
他の子供たちも困ったなあという様子だった。
子供たちとゆっくり歩き始めると、K君がポン太を慰め始めた。
「俺だって嫌なこと言われることあるよ。」と、ポン太を元気付けようと色々話しかけてくれる。
ちょっと前にはボーっとしているポン太をからかってばかりいたK君だが、こんな優しいところもあるんだなと、新しい発見だった。
夜になってからポン太に、「心の教室の先生に相談してみたら?どうしたらいいか、何か教えてくれるかもしれないよ。」と言った。
スクールカウンセラーの人が週に一回程度来ていて、ちょうど翌日がその日だった。
ポン太は「う~ん、もう少し考えてみる。」と言った。
「担任の先生に相談してみようか?」と言うと
「先生には言わないで。先生に言ったらみんなで話し合うことになると思うから。そしたらまたいろんなこと言われるから嫌なの。」
私は「そうかー。」としか言えなかった。
傍から見ると些細なことなんだけど、些細なことじゃないんだよね、これが。
とってもデリケートな問題でもある。
Mちゃんのお母さんと話してみるという選択もあるけれど、それは最後の手段。
どんなに親しいお母さんでも、この手の話はショックなものなんだと思う。
どんなにソフトに切り出してもうまくいかないことがある。
私も長男が2年生の頃「うちの子が泣いて帰ってきたんだけど・・・・・・」という電話を近所のお母さんからもらった事がある。
何でうちの子が?!という思いが真っ先にきて、結構ショックだったと記憶している。
そんなことで電話するの?という気持ちもあった。
それでも何とか気持ちを落ち着けて子供に話を聞いてみると、まだあまりコミュニケーション能力が高くない子供特有の誤解や勘違いが招いたトラブルだということが分かった。
勘違いとはいえ女の子が傷つくようなことを言ってしまったので、長男にはその子に謝るように言って、その子のお母さんにも経緯を説明して謝った。
子供の世界ではよくある些細なトラブルと言えばそうなのだが、その女の子にとっては、普段意地悪したりしない長男から言われたというのがショックだったようで、あまり泣いたりしない子が家で号泣したのだそうだ。
それで電話が来たのだった。
私だったら電話しなかったと思うが、誤解が解けて結局は良かった。
私もやむにやまれず電話をしたことがある。
なるべく穏便に事の次第を説明しようとしたのだが、私が最後まで話をしないうちにそのお母さんは興奮した口調で、うちの子だけが悪いわけじゃないでしょう、というようなことを言い出して、私の真意は伝わらなかったようだった。
割と親しいお母さんだったので大丈夫かなと思っていたのだが、誰でも自分の子供のことになると冷静ではいられなくなるんだということが、身に沁みた出来事だった。
私がかけた電話のせいでその後もちょっとしたごたごたがあったが、どうにかこうにか問題は解決した。
それでも、その時の精神的なストレスは物凄いものがあった。
食事なんてのどを通らないし、体はフラフラになるし、電話なんてしなければよかったとどれほど後悔したことか。
だからポン太の問題も、Mちゃんのお母さんの出番がないうちに、何とか落ち着いてくれたらいいのだが、どうしたものか。
ポン太は今日はどんな顔をして帰ってくるのか。
「嫌なこと言われた。」と泣きそうな顔で子供が帰ってくるのは、やっぱり辛い。
子供にはいつも笑顔でいてほしい。
これは世のお母さん達の願いだね、きっと。
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